根管治療の重要性とQOL向上への影響について考える

根管治療の重要性

一般社団法人日本歯内療法学会が実施した調査によると、歯の根の治療、すなわち根管治療の認知度は驚くべきことに4割以下という結果が出ました。20代から50代の男女522人、歯科医師507人、合わせて1,029人を対象としたこの調査は、私たちの歯における治療の必要性について深く考察する良い機会となりました。

根管治療は、虫歯が神経に達した際、歯を抜かずに残すための重要で、第一に考えられるべき治療法です。治療を受けることで、根管を消毒・密閉し、しっかりと処理された歯は、20～30年間も持つことがあると言われています。治療の回数は通常の虫歯治療と異なり多くなりますが、それを経て自分の歯を維持できることが、根管治療の大きなメリットなのです。

認知度の現状

調査結果に目を向けると、根管治療について「詳しく知っている」と回答した人はわずか9.6%。さらに、「名前は聞いたことがあるが詳しくは知らない」が25.5%、「全く知らない」と答えた人が64.9%。つまり、実に約3分の2の人々が根管治療の存在自体を知らないということです。実際に治療を受けたことがある人は19.8%にとどまり、74.4%の人は受けたことがないと答えています。

このように、多くの人が根管治療を受けたことがないのは、適切なタイミングでの治療を受けていない可能性が高いことを示唆しています。根管治療が必要になるのは、重度の虫歯になった場合や外的な理由で神経が侵された場合が多いですが、それらの認知が不足しているのが現実です。

治療を受けた人の声

根管治療を受けた方々が感じたメリットは様々ですが、最も多かったのは「歯を抜かずに済んだ」という声で、45.6%の人々が選びました。次に「しみる感じがなくなった（23.7%）」「治療後の違和感が少ない（16.7%）」と続きます。これらの声からも、実際に治療が効果をもたらし、日常生活に良い影響を与えたことが分かります。

一方で、主に治療を受けたことがない人々からの質問では、「根管治療は痛そう」「費用が高い」「治療期間が長い」といったネガティブなイメージが強調されました。この結果からも、情報の不足が不安を生み出し、治療への心理的な壁を作っていることが見て取れます。

治療を受けないことのリスク

治療を受けない場合のリスクについて尋ねたところ、約40.9%の人が「分からない」と回答しました。「歯を失う可能性がある（28.2%）」や「痛みや腫れが再発する（25.3%）」といった意見もありましたが、理解していない人が多いのです。この認識の欠如こそが、治療への不安を引き起こし、結果として適切な医療を受ける機会を逸する原因となります。

歯科医師の意見では、患者の理解を深めるための努力が行われています。痛みの少ない治療を採用したり、視覚資料を使用したり、詳細な治療内容の説明を行うことが挙げられます。治療に対する不安を軽減するためには、技術だけでなくコミュニケーションも重要であることが後押しされています。

まとめ

根管治療は決して「最後の手段」ではなく、日常生活に密接に関係し、QOLを高めるための「第一の選択肢」となるべき治療法です。今回の調査結果から得られた知見を元に、正しい情報の提供を行うことが必要であり、患者が自身の歯の健康を守るための判断ができるようになることが求められています。正しいリスク認識が必要であり、それが患者自身の健康管理や歯の維持に直結しているのです。