愛知・渡辺酒造、食用米で新たな酒の地平を拓く挑戦
愛知県愛西市に1865年に創業した渡辺酒造が、食用米『にこまる』を使った純米大吟醸への挑戦を始めました。この取り組みは、単なる技術の挑戦ではなく、日本の食卓を守るための重要な選択なのです。
食卓を揺るがす現代の危機
近年、中東情勢の影響などで食料供給が不安定になっています。日本は多くの食材を海外から輸入しているため、国際情勢の変化が直接日本の食に影響を与えることが実感されています。特に米は、日本が自給可能な数少ない主食の一つですが、農家の高齢化や耕作放棄地の増加により、その基盤が脅かされています。このような状況下、渡辺酒造は日本の農業の未来を見据え、食用米の価値を再定義することを決意しました。
食用米『にこまる』の可能性
通常、酒造りには山田錦などの酒米が用いられることが多いですが、渡辺酒造はあえて『にこまる』を選びました。食用米は高精米が難しく、管理が繊細ですが、農家にとって『にこまる』に価値を見出すことで、需要を高め、日本の食文化を守る道を探っています。
「食べて美味しい米は、飲んでも美味しい酒になる」という信念のもと、渡辺酒造は『弥栄の酒 寿 にこまる仕込み』を製造しました。その風味は、透明感のある甘みと共に鋭いキレを持ち、食用米ならではの柔らかな旨みを感じることができます。
塊となる酒の価値
渡辺酒造は、すべての銘柄を廃止し、一つの銘柄に絞って酒を造ることを宣言しました。この判断は、ただのビジネス上の決断に留まらず、農家や顧客、本当に価値のある社会を築くための方向性を示しています。また、王冠を廃棄せず、再利用する取り組みなども行っており、環境にも配慮した姿勢を見せています。
消費で終わらない関係
渡辺酒造は、消費者と農家とをつなぐ関係づくりを目指しています。一杯の酒を通じて、その背後にいる農家のストーリーや、日本の米作りの未来を理解し、感じてもらうことを大切にしています。この運動は、単に酒造りに留まらず、食文化全体に広がる意義を持つものなのです。
未来への覚悟
若い農家たちの意欲を引き出し、米作りを続ける理由を増やすために、渡辺酒造はこれからも挑戦を続けます。『弥栄の酒 寿』を通じて、米と農業の未来に光を当て、日本の食文化を守る意志を示し続けるのです。