中堅社員の後輩指導の現状と課題
近年、多くの企業において中堅社員が後輩指導(OJT)を行うことが求められています。しかし、実態としてどれだけの中堅社員がこの役割を果たし、またどれだけの意欲を持っているのでしょうか。ALL DIFFERENT株式会社とラーニングイノベーション総合研究所が行った調査結果をもとに、中堅社員の後輩指導に関する現状を掘り下げていきます。
調査の背景
社会人のキャリアにおいて5年以上が経過した中堅社員は、業務に必要な知識や経験を豊富に積んでいます。彼らは上司からさまざまな責任ある仕事を任され、自律的に業務を進めるだけでなく、チームのリーダー役や若手の橋渡し役も期待される重要な存在です。その中で、必須の役割として「後輩指導」があります。しかし、実際のところ、モチベーションや実践状況はどうなのでしょうか。
調査結果の概要
調査の結果、後輩指導を実施している中堅社員はわずか35.5%に過ぎず、4割程度が意欲的に取り組んでいることが分かりました。一方で、約60%の中堅社員がモチベーションが低い状況です。このことは、企業や組織として後輩育成に向けた支援が必要であることを示しています。
後輩指導における課題
調査の結果、後輩指導で最も苦労しているのは「後輩の力量に応じた業務を与えること」となっており、33.1%がこの問題を挙げました。さらに、後輩と良好なコミュニケーションを担保することや、成果につながるようなサポートを行うことも大きな課題として挙がっています。中堅社員が自身の計画を立てず場当たり的な業務割り振りをしている傾向があることが推察されます。
モチベーションと苦労の関係性
調査でモチベーションが高い中堅社員は、「育成のゴール設定」や「後輩との円滑なコミュニケーション」に苦労している一方で、モチベーションが低い社員は「改善点の活用」に問題を感じていることが分かりました。このことから、モチベーションの高低が育成活動の成果にどのように影響するかを考慮する必要があります。
組織全体での育成支援
企業は新入社員の入社や組織変更が行われるこの時期に、育成計画を再検討し、OJTを担当する社員の育成も重要です。具体的には、教えるスキルを新たに身につけさせるトレーニングや、育成業務の意義を理解させる教育が必要です。また、複数の育成担当者を設定し、進捗を共有する場を設けることも効果的です。
まとめ
この調査から、後輩指導を行っている中堅社員の多くが、モチベーションの低下を実感していることが分かりました。企業は、彼らがより自信を持って後輩を指導できるよう、組織全体での育成体制の強化が求められています。業務が複雑化する現代において、育成の質の向上は企業の成長に不可欠な要素となるでしょう。