自死遺児を支援する絵本『さよならなんかしない』
はじめに
自殺という言葉は、多くの人にとって重い意味を持ちます。しかし、それがもたらす影響は、亡くなった方だけでなく、その家族や周りの人々に深い影響を与えます。自死遺児とは、親を自殺で失った子どもたちのことです。本記事では、そんな子どもたちを支援するプロジェクトから生まれた絵本『さよならなんかしない』をご紹介します。
絵本の概要
『さよならなんかしない』は、佐藤まどかさんと森山花鈴さんの共著で、高橋和枝さんが絵を担当した作品です。この絵本は、自死遺児を主人公に据え、彼の心の葛藤や成長を描いています。物語は小学5年生のユウの視点から語られ、彼が父を自殺で失った後に経験するさまざまな感情が丁寧に表現されています。
物語の中でのユウの成長
物語は、ユウが父からの突然の別れを経験し、その後の生活の中で抱える孤独や不安、そして心の痛みを描いています。読者は、ユウが相談室に足を運び、カウンセラーとの対話を通じて徐々に心を開いてゆく様子を見守ります。その中で「泣くのをがまんしていると胸が痛くなる」ことに気づくなど、彼の内面的な成長がリアルに描かれています。
グリーフケアについての理解
この絵本は、子どもたちが経験する「グリーフ」、つまり大切な人を失った悲しみややり場のない感情について考えるきっかけを提供しています。特に、自死遺児の心理的な苦しみは他者には理解しづらい部分もありますが、その心の動きを描くことで、周りの人々がどう接すればよいかを考えさせる重要なメッセージが含まれています。
著者たちの思い
このプロジェクトには、自死遺族である佐藤まどかさんが深く関与し、彼女自身の経験が執筆に色濃く反映されています。彼女は、自死という現実を受け入れることの難しさを知っており、その経験をもとに作品が生まれました。また、森山花鈴さんは自殺対策の研究者として、子どもたちが抱える感情に基づいた意義深いストーリーを構築しました。
教育者や親に向けてのメッセージ
本作は、子どもたちだけでなく、教育者や親にも大きなメッセージを送っています。それは、「子どもたちに事実をきちんと伝えることが重要」であるという点です。子どもたちが安心して相談できる環境の重要性を訴え、周囲の大人たちの理解を促します。
絵本の刊行情報
『さよならなんかしない』は、2025年11月12日に出版が予定されており、定価は1,870円です。本書は、11月が「子どもの権利月間」であることに合わせての発行であり、子どもたちの権利が改めて考慮されることを願っています。また、11月23日は「グリーフを考える日」とされることから、特に多くの人に手に取ってもらえることを期待しています。
まとめ
『さよならなんかしない』は、自死遺児の心の葛藤や成長を描いた物語です。この絵本を通じて、子どもたちが抱える様々な感情や苦しみを理解し、周囲がどう寄り添うべきかを考えるきっかけになることを願っています。優しい言葉と絵で綴られたこの本が、多くの人々の心に届きますように。