新たな価値を生み出す「Castreasure」とは
名古屋の中央可鍛工業株式会社と、名古屋大学発のスタートアップ企業SyncMOFが手を組み、鋳造工程で発生する廃棄物を新たな価値ある素材「Castreasure(キャストレジャー)」として再利用する技術を確立しました。これにより、環境への配慮が求められる現代において、持続可能な素材開発が一歩前進したと言えるでしょう。
Castreasureの概要
「Castreasure」とは、鋳造で出た不要な物質を原料に、多様なガスを選択的に吸い取り、また放出することが可能な金属有機構造体(MOF)の一種です。元々は、活性炭やゼオライトといった多孔性材料と比較して、非常に大きな比表面積を持つことが特徴です。そのため、特定の物質を効率的に吸着・脱着する性能に際立っています。
この名称は「Cast(鋳造)」と「Treasure(宝物)」の合成であり、鋳造というプロセスを通じて創出される新たな価値を象徴しています。
MOFについて
MOFは金属イオンと有機配位子の結合によって構成された多孔性材料で、これまで様々な分野でその性能が活かされてきました。特に、材料の設計自由度が高く、目的に応じて金属イオンと有機部分を選択できるため、さまざまなガスの吸着能力に優れるのです。これにより、環境問題を解決に導く手段として期待が寄せられています。
サーキュラーエコノミーへの貢献
鋳造プロセスで生じる不要物の多くは通常、専門業者によって処理されるのみですが、それをCastreasureに転換することで、未活用のリソースを新たに価値のある製品へとアップサイクルすることができます。この取り組みは、単なる廃棄物処理を超えて、サーキュラーエコノミーの理念に則り、持続可能な社会の実現に寄与します。
特に、Castreasureは二酸化炭素を含むさまざまな物質を吸着する性能を持ち、これまでの鋳造工程から排出されるCO2といった温室効果ガスを削減する手助けも期待されます。また、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)技術やDAC(Direct Air Capture)技術への応用についても研究が進められており、環境保護の観点からも非常に魅力的な素材といえるでしょう。
EXPO 2025での披露
「Castruasure」は、2025年に行われる大阪・関西万博の「MOF FESヒーローになるCO₂プロジェクト」にも参加予定です。ここでは、PR動画や紹介記事を通じて、より広くその魅力を発信していく計画です。
企業情報
今回の開発を手掛けた会社についても触れたいと思います。SyncMOFは2019年に設立され、新規多孔性材料の研究開発やそれに関連した商品開発を行う企業です。一方で、中央可鍛工業は1944年に設立された老舗企業で、様々な鋳鉄製品の製造を手がけています。その共同開発により、鋳造業界の新たな未来が切り開かれつつあります。
これからのCastreasureの展開にますます目が離せません。環境と経済が共存する持続可能な未来に向けた新しい一歩を、私たちも応援していきましょう。