ECサイトにおける表示スピードが購入意欲に与える影響とは
近年、ECサイトの人気が高まる中、サイトの表示スピードがユーザーの購買行動に与える影響が重要視されています。株式会社ギャプライズが行った調査によれば、ECサイト利用者の約8割が表示スピードの遅さによって購入意欲が低下すると答えています。これは、デジタル環境における競争が激化する中で、特にサービスの信頼性に直結する要因となっています。では、どのような要素が影響を及ぼしているのでしょうか。
調査の背景と目的
調査は、20~60代のECサイトの利用者を対象に行われ、約1,012人が参加しました。調査期間は2025年11月4日から6日までで、インターネットを通じて実施されました。この調査の主な目的は、ECサイトにおける「読み込み遅延」が購買行動にどのように影響するかを把握することです。
ユーザーが感じる表示スピードの基準
「読み込みに何秒かかると『遅い』と感じるか」という質問に対して、最も多かったのは「4秒以上」が34%を占め、次いで「3秒」「2秒」と続きました。特に、3秒以上かかると「遅い」と感じる層が6割を超えており、ユーザーが求めるスピード感は非常に厳しいものです。さらに、1秒を超えた場合、ユーザーの思考が途切れるという研究結果もあります。
表示スピードと購入意欲の関係
約8割の回答者が「遅いと購入意欲が低下する」と認識しており、特に4秒以上の遅延が購入意欲の大きな減少につながることが示されています。しかし、実際には3秒での離脱も多く見受けられ、2秒以内でも少なからず不満を持つユーザーが存在します。このように、表面的には少ない時間の遅れでも、ユーザー体験に大きな影響を及ぼすことが分かるのです。
どのジャンルのサイトが遅さを感じやすいか
調査では、特に「旅行・チケット購入サイト」が32%で最も多く、「アパレルサイト」や「ECモール」も続きました。高画質の画像や動画が多いジャンルでは、データ量が増加し、結果的に読み込みに時間がかかる場合が多いのです。これらのサイトでは、スピードが特に求められるため、ユーザーは敏感に反応します。
年代別の離脱状況
年代によっても、離脱しやすいシナリオが異なります。例えば、20代や30代の世代は「SNSや広告を見て気になった商品を閲覧した場合」に離脱しやすい傾向が見られます。一方、50代や60代は商品の購入意欲が高い場合に限り、表示スピードの遅さが不満となりやすいようです。これは、年代による情報探索のスタイルや購入余地の高まりを反映していると言えるでしょう。
不満の原因と行動パターン
「ECサイト使用中に感じる不満」について尋ねたところ、全年代で「表示速度の遅さ」が最も多い回答でした。また、表示が遅くなるとすぐに行動を変え、『デバイスを変更』したり『再接続』を試みたりします。20~40代は、改善の余地があれば再度同じサイトを使おうとする傾向があり、50~60代は別のサイトへ移動する傾向が強いという結果も得られました。
離脱後の行動
表示が遅かった際に別のECサイトで購入することになったのは81%のユーザーでしたが、その中では「購入を検討していた商品」を買った割合が82%に達しています。しかし、残りの18%は購入を考えていなかった商品を購入していました。このように、表示遅延の影響で不意な売上を生むこともあるのです。
カートの段階での離脱がもたらす影響
特に注意が必要なのは、カートに入れた後の段階です。調査の結果、約45%の利用者がこの段階での表示の遅さを理由に購入を断念したと回答しました。これは、心理的にも非常に大きな障壁となります。購入意欲が高い状態でも、待たされることがその意欲を打ち消してしまうのです。
購入後の印象と今後の対策
購入が完了した後に気になったのは、表示が遅かった場合の印象です。「商品を購入できたから許容する」という回答は約28%に対し、「信頼感が減少する」との回答も同じくらいでした。表示の遅さがユーザーの信頼感に影響することは明らかで、利用を続けたいと考える人は全体の3割を下回ります。
結論
今回の調査結果から、ECサイトの表示速度が非常に重要な要素であることが浮き彫りになりました。表示スピードが遅いと、ユーザーの『信頼』と『購買意欲』が大きく損なわれることが分かります。企業は、ユーザーにとって快適な体験を提供するため、サイトの表示スピード改善を真剣に考えなければなりません。競争の激しいEC市場において、数秒の遅延が売上につながらないリスクを考慮する必要があるでしょう。また、ECサイトのスピード改善は、単純な利便性の向上だけでなく、顧客との信頼関係を築くための重要な施策であるといえます。