150年以上の歴史を持つ酒蔵「敷嶋」の復活
愛知県半田市に位置する酒蔵「敷嶋」が、廃業から20年以上の時を経て復活を果たしました。2021年、9代目の伊東優がこの歴史ある酒蔵を再生させるという大役を担い、アルコール発酵に必要な独自の清酒酵母を発見することに成功しました。今回、彼が目指すのは過去の味を現代に再現すること。この取り組みは、地域の農家との協力によって生まれた「KT酒米プロジェクト」にもつながっています。
酵母採取の挑戦
清酒製造において酵母は重要な役割を果たします。「サッカロマイセス・セレビシエ」という微生物が清酒の発酵を助け、その種類によって清酒の風味が大きく異なります。「敷嶋」もかつては独自の酵母を持ち、他にはない味わいを醸していました。しかし2000年に廃業して以来、その酵母は失われてしまったとされていました。ところが、伊東優は土地と建物を買い戻し、酒造りを再開しました。
かつての製造記録を見ていた彼は、「SK-1」「SK-2」という記載を発見し、これが過去に存在した独自酵母を示すものであることに気が付きました。この夢のような挑戦が現実となる可能性を求めて、名城大学農学部の加藤教授との出会いが大きな転機となりました。
名城大学との連携
名城大学の学生たちは、過去の蔵から酵母を分離するという極めて困難な任務を担いました。2025年には、光を当てられなかった清酒蔵の桶から微生物の採取を行い、7つの「酵母らしき菌」を特定しました。その後の調査によって、その酵母が独自のものであることが明らかになりました。この独自の酵母は、200年以上の時を超えて復活したものであり、「敷嶋」の新たな酒造りの基盤となるのです。
開発の進展と新酒の誕生
2025年11月には、独自の酵母を用いた初めての試験醸造が行われ、バナナの香りやメロンのような旨味が感じられる清酒が完成しました。この成功により、今後の酒造りにおいてもこの独自酵母が活用されることが期待されています。今回の取り組みは、地域の農家と連携した「KT酒米プロジェクト」に基づいており、地元の米農家の現状を知ってもらうことを目的としています。
伝統と革新の融合
敷嶋は天明8年(1788年)に創業し、長きにわたり愛知の地で酒造りを続けてきました。一度は廃業を余儀なくされましたが、伊東優の尽力によって新たな歴史を歩むことができました。今回の取り組みは、酒造りに対する情熱や地域への思いが込められており、4月11日の亀崎酒蔵祭で初めてお披露目される予定です。新たに生まれた「敷嶋」の清酒は、昔の味わいを再現しながらも、現代人の味覚に合った新しい体験を提供します。
おわりに
伊東株式会社は、伝統を大切にしつつも新しい挑戦を続けています。過去の魅力を引き出した独自の清酒酵母は、これからどのような可能性を秘めているのでしょうか。志の高い酒造りが、愛知の魅力をさらに引き出すことを願っています。こうした取り組みが、地域の活性化にもつながると期待されています。今後の進展に目が離せません。