名古屋市がガバメントクラウド導入で実現したFinOpsの未来とは
名古屋市は、全国に先駆けてガバメントクラウド環境にAWSコスト管理ツール「srest」を正式導入することが決定しました。これにより、効率的な財務管理と業務の最適化を目指す新たなステージに突入します。
1. ガバメントクラウドの背景と導入の目的
名古屋市は、2022年に策定された「名古屋市役所DX推進方針」に基づき、AWSを利用したガバメントクラウド環境への移行を進めています。その際、各業務システムが「単独利用方式」で構築されており、システムごとに分かれたAWSアカウントが運用上の課題を引き起こしていました。具体的には、全体のクラウドコストを一望することが難しく、手作業での請求業務が多く発生するという状況が続いていたのです。
これらの課題に対処するために、名古屋市は2025年3月からの正式運用に向けて、AWSコスト管理ツール「srest」を活用した実証実験を開始しました。この実験では、請求情報の自動収集と可視化を通じて、業務運用効率の向上が期待されています。
2. 実証実験による効果
実証実験の結果、以下のような効果が具体的に確認されました。第一に、各業務システムのコストが明確に可視化されました。これによりどのAWSアカウントがどれだけのコストを発生させているのか、一目で把握できるようになりました。
次に、請求および支払い業務の効率化が実現しました。従来は手作業で行われていた会計別の請求額の按分計算や帳票作成が自動化され、工数が大幅に削減されました。特にスレストは、AWS上でタグ付けがされていないサービスでもコスト配賦ができるため、手続きの簡素化が進みました。
さらに、コスト構造の可視化によって、一部のサービスで予想以上に高額な利用料金が発生していることが判明しました。この気付きから、無駄なコストを削減するための方針見直しも進められています。
3. 未来への展望
現在、名古屋市はガバメントクラウド移行にあたり、FinOpsの運用とコスト最適化を継続的にサポートする体制を整えています。このような取組は、単なるコスト削減だけでなく、次年度の予算編成にもポジティブな影響を与えることが期待されています。実際、実際の支出データを基に予算の見積もりが可能になり、財政局との座談会もスムーズに進むようになりました。
名古屋市総務局デジタル改革推進課の高橋広和課長補佐は、srestの導入が業務運営の負担軽減につながることを高く評価し、今後のニーズに応えた機能追加も期待されています。要するに、名古屋市の事例は、デジタルトランスフォーメーションの陰でどれほど効率性を追求できるかの好例を示しています。
4. 「srest」の特徴
「srest」は、クラウドコストに関する透明性を高め、各部門やシステム単位での詳細なコスト分析を支援するツールです。また、AWSが実施する技術レビュー「AWS Foundational Technical Review」を通過したAWS認定のソフトウェアでもあります。このような信頼性のあるツールを活用することで、名古屋市はより効率的な運営を実現し、新しいガバメントクラウドの未来を切り拓いていくでしょう。
このように、名古屋市が取り組むFinOps実践と「srest」の導入は、デジタル化の進行とともに地域行政の透明性と効率化に大きく貢献します。今後の動向から目が離せません。