物価高騰が管理栄養士の仕事に及ぼす影響と現状の課題

2025年8月、株式会社エス・エム・エスが実施した調査によって、全国の管理栄養士・栄養士1,959人の働き方に関する実態が明らかになりました。多くの専門家が感じている職場環境や物価高騰の影響について見ていきましょう。

職場への満足度の変化

調査によると、管理栄養士・栄養士の43.8％が現在の勤務先に満足していると回答。一方、前回調査では47.3％が満足していたため、満足度は減少傾向にあります。満足していない理由のトップは「給料が安い」、次いで「昇給が見込めない」と、経済的葛藤が見てとれます。

給与と待遇の実態

正社員として勤務している管理栄養士・栄養士の86.8％は月収が16万円から30万円の間に位置しており、過去1年の賞与は主に51万円から60万円であることが判明しました。給料や賞与は、働きがいに直接影響を及ぼすため、職場での人間関係と合わせて重要な要素といえるでしょう。

物価高騰の影響

約84.1％の管理栄養士が、物価高騰がメニュー開発や献立に悩みをもたらしていると回答。また、約半数は給食予算の増額を経験したとし、1食あたり41円から60円の増額を希望しています。これにより、安定した給食提供が求められていることが浮き彫りになりました。

購入を見送った食材

調査によれば、約80％の専門家が予算の都合で購入を見送った食材が「果物」や「牛肉」、「ウナギ」などの高級食材であったとしています。この結果から、栄養バランスだけでなく、喫食者の満足度にも影響を及ぼしていることが予想されます。代替品の使用増加や盛り付けの工夫が求められています。

職場環境の課題

調理スタッフの不足を感じている人が約70％いるという結果も出ており、スキル低下の懸念も浮き彫りに。約半数が「高齢化」による教育や指導時間の不足を問題視しており、職場全体のスキルや衛生管理に不安を募らせています。まさに厳しい環境に従事しているわけです。

食材費の節約術

物価高騰により、管理栄養士は「食材費」や「食材の廃棄を減らす」ことなどの節約に取り組んでいます。嗜好調査を活用して残食の出づらいメニュー作りや、食材卸業者とのやり取りを通じてコスト削減を図る取り組みも顕著です。しかし、47.3％が今後の節約の難しさを感じており、状況は厳しいと言えそうです。

専門家の声

「物価高騰の影響で、どのように食材を選ぶかが問われています。バナナなどの代替品を使わざるを得ない現実が、私たちの献立に影響を及ぼしています」と一人の管理栄養士は語ります。加えて、「収益を出すためにコスト調整を行っているが、それでも厳しい」との言葉も。

結論

調査結果から、経済的な厳しさが管理栄養士の専門職としての満足度に直接影響していることがうかがえます。今後、職場環境が改善されることで、より良い給食サービスを提供できるような体制が整うことが期待されています。管理栄養士が安定した労働環境で働けること、そして食材の適切な提供が続けられることが望まれます。