名古屋市立大学の光技術研究拠点発足
名古屋市立大学(名古屋市瑞穂区)は2023年1月17日、光技術研究拠点の設立を発表し、当日のプレスセミナーでは加齢・環境皮膚科学分野の森田明理教授が講演を行いました。この拠点は、光の波長特性を活用して、難治性皮膚疾患の治療技術や光を自在に操る技術の開発を目指しています。
経過と狙い
「光技術研究拠点」は、名古屋市立大学が先端的かつ国際的な研究拠点形成を目的とした「卓越研究グループ支援事業」に採択されたことをきっかけに、2022年11月に発足しました。最終目標は、難治性疾患やがんの新治療法の確立、免疫制御のメカニズムの解明といった研究が中心となります。
森田教授は、「紫外光から可視光、赤外線まで、幅広い波長を医療に応用し、国際的にもトップクラスの拠点を目指す」と意欲を示しました。また、この研究拠点では、若手研究者の育成も重要な課題に位置付けています。
研究テーマ
光技術研究拠点では、以下のような具体的な研究テーマが設定されています。
1.
難治性疾患への基盤技術開発 – 光の波長特性を最大限に活かし、皮膚疾患や免疫制御などの新しい治療法を開発する。
2.
次世代光線力学の研究 – 糖と腫瘍ホーミングペプチドを結合した光感受性薬剤の効果を探る。
3.
光線による免疫制御 – 紫外線が樹形細胞に対する作用を通じて、免疫応答を制御するメカニズムを解明する。
4.
光を扱うフォトニック結晶技術の開発 – 光を精密に制御するための最先端の技術を探求する。
教授のビジョン
森田教授は、名古屋市立大学が長年にわたって蓄積してきた医学、薬学、工学の知識を基に、幅広い分野で「光」を応用する研究を進めていきたいと語っています。また、光技術の基盤を整備し、国際的な研究拠点にすることで、様々な医療課題に貢献することを目指しています。
具体的な成果と社会への影響
名古屋市立大学はこれまで、皮膚疾患に対する革新的な治療法を開発してきました。例えば、1997年には紫外線を用いた治療法PUVAの研究がスタートし、2008年にはエキシマ光源を利用した308nmセラビーム®(治療機器)、さらに2021年には深紫外LEDを活用した新しい治療機器を開発しました。
今後、在宅での光線療法が可能となる機器の開発や、さらに効果的ながん治療に向けた研究が期待されています。光の特性を利用した新たなアプローチが、医療分野での革新を促すことでしょう。
未来への期待
森田教授は、光技術の研究が高齢者医療の支援にも寄与することを期待しており、「光に関する様々な生命現象の研究を通じて、より良い社会の構築に貢献したい」と話しています。この光技術研究拠点は、名古屋市立大学にとって大きな飛躍をもたらすものであり、全国の研究者や医療関係者にも新しい可能性を提示しています。
今後の研究成果が期待される光技術研究拠点に、注目が集まります。