愛知発の新素材「URCYL」とは
2025年1月、合同会社ELEMUSが開発した新素材「URCYL(アーシル)」が、フランス・パリで開催される世界最大級のインテリアとデザイン関連国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に初出展します。URCYLは漆と木粉を原料とした100%植物由来のバイオマス成形体技術であり、これまでの環境負荷の低減を目指す取り組みの一環として開発されました。
漆の再解釈
日本古来から利用されてきた天然素材である漆は、縄文時代から人々の生活に寄り添ってきました。ELEMUSは、環境に配慮した素材開発を行い、漆と微粉砕された木粉(主に間伐材や端材)を組み合わせることによって、従来の漆の概念を新たに解釈しました。彼らの技術は、特許も取得しており、これにより持続可能性と再生可能性を追求しています。
ウルシノキ自社栽培の取り組み
近年において、日本国内のウルシノキの栽培が減少し、現在ではほとんどが輸入に頼っています。そこでELEMUSは、自社でウルシノキの栽培を開始しました。独自技術で人工発芽を成功させ、その苗を愛知県の中山間地に植樹しています。ウルシノキは発芽後15年程度で樹液を採取できるため、安定した資源供給が期待されます。さらに、ウルシノキは成長が早く、CO₂の吸収も効率的であるため、環境保護の観点からも注目されています。
新デザインディレクターの就任
また、デザイン事務所「STUDIO BYCOLOR」を運営するデザイナーの秋山かおり氏が新たにデザインディレクターに就任しました。彼女は漆と木粉に新たな価値を見出し、「URCYL」のプロダクト開発をインスパイアする役割を担います。秋山氏の視点を通じて、デザイン界の発展を目指し、さまざまなデザイナーと連携していく予定です。
「URCYL」の特徴と展望
「URCYL」は、石油由来のプラスチックと同様の化学構造をもち、高い物理的強度や耐熱性を備えています。抗菌性や抗ウイルス性もあり、食洗機での使用もできるため、食器や照明器具、工業製品の部品としての利用も期待されています。また、メゾン・エ・オブジェでの展示では、「URCYL」の背景にある素材の循環についてもアピールされる予定です。
未来への責任あるものづくり
未来の持続可能な社会を実現するためには、資源の循環と透明性が重要です。ELEMUSは、地域との連携や企業の協力を重視し、持続可能な製品への道を切り拓いています。2025年のメゾン・エ・オブジェでは、漆から生まれたURCYLがどのように新しいライフスタイルを創り出すのか、多くの人々にその魅力を伝える機会となることでしょう。
このように、愛知県岡崎市を拠点とするELEMUSの取り組みは、伝統技術を現代に活かし、環境保護と持続可能性を両立する新たな可能性を示唆しています。彼らの活動に期待が高まります。