地域資源を活用した新たな取り組み
長野県根羽村が新しく始める大径材の天然乾燥試験「Neba Scale」。このプロジェクトは、環境負荷を抑えた木材利用の実現を目指しており、特に近年のエネルギー価格の高騰を背景に進められています。村内には自然に豊かな大径材が豊富に存在しており、その活用方法を見出すことが急務とされています。
大径材の増加とその活用の難しさ
戦後に広がった造林の影響で、日本各地で木が育てられ、今まさに利用期を迎えています。しかし、特に根羽村では、思った以上に太く成長した大径材の存在が問題になっています。これらは本来は資源ですが、現在の木材需要にはマッチせず、出しにくくなっています。
その大きな障壁は過程にあります。大径材は乾燥に時間がかかり、人工乾燥に頼ると大量のエネルギーを消費します。エネルギー価格が上昇する中で、乾燥にかかるコストが高くなり、その結果、木材価格にも影響が出てしまうという悪循環に陥っています。根羽村はこの状況を打破し、持続可能な方法で木材を活用する方法を模索しています。
「Neba Scale」の試験内容
「Neba Scale」は、以下の3つの特徴を持つ実験です:
1. 環境の異なる3拠点で同時実施
本プロジェクトでは、矢作川流域圏の3箇所、すなわち山間部の根羽村、平野部の安城市、沿岸部の西尾市でのデータ収集を行います。地域ごとの気候差が、木材の乾燥にどのように影響するかを比較検討し、将来的な気候変動に適応するための指針を探ります。
2. 経済草の天然乾燥
新たな設備を作るのではなく、既存の施設を利用して、天然乾燥に特化した試験を行います。この経済的なモデルを通じて、資金を無駄にせずに、大径材の乾燥プロセスを確立することを目指しています。
3. 多様な木材形状でデータ蓄積
実験には、以下の3つの形状の木材が使用されます:
- - 正角材:260mm角
- - 太鼓材:160mm厚み
- - 丸太材:皮剥きのみ
これらの木材を使い、約1年の間に乾燥速度や品質、ひび割れや変形について詳細にデータを記録し分析します。
社会的なインパクトを目指す
「Neba Scale」は単なる技術実証にとどまらず、持続可能な社会の実現に寄与することを目指します。具体的には、化石燃料に依存せず、環境に優しい木材生産を実現することを狙っています。
また、これまで「厄介者」とされていた大径材を高付加価値な地域資源として活用するモデルを築き、地域経済の向上にもつなげます。さらに、気候変動に適応した流域分散型モデルを構築することで、将来的な木材利用のあり方を効率的に進化させることが期待されています。
期待される成果と今後の展望
本実験の試験期間は2025年11月から2026年11月までの約1年で、得られたデータを基にして天然乾燥の効果を分析します。このプロジェクトが成功することで、根羽村のみならず、周辺地域の大径材の経済的価値を高め、より持続可能な資源利用の道を切り開くことができます。そして、この知見が流域内で共有され、地域特性に応じた木材の利用方法が広がることを期待されています。
まとめ
根羽村の「Neba Scale」プロジェクトは、環境保護と地域活性化を両立させる画期的な取り組みです。天然乾燥の技術が確立されれば、多くの地域での木材利用の概念が変わり、森やそこに育てられた木々の可能性が広がるでしょう。地域の未来に向けた大きな一歩を、根羽村が踏み出そうとしています。