愛知の企業、労務費の価格転嫁に苦しむ実態を調査
名古屋商工会議所が実施した第55回定期景況調査によると、愛知県の企業では労務費の価格転嫁が依然としてうまく進んでいないことが明らかになりました。この調査は、労務費の価格転嫁の実態を理解するために行われ、1,318社を対象にしたインターネット調査の結果が反映されています。
調査の背景と目的
2023年10月18日、愛知県の最低賃金は63円の引き上げが行われ、1,140円に設定されました。この賃上げの影響を受けて、多くの企業が労務費の上昇に直面しています。そのような中、労務費の適切な価格転嫁が企業経営において最も重要な課題の一つになっています。公正取引委員会と内閣官房は、2年前に労務費の適切な価格交渉に関する指針を公表しましたが、実際には多くの企業がこの指針の内容を理解しておらず、実践には至っていないことが問題として挙げられています。
調査結果の概要
調査では、価格転嫁の必要があると感じている企業811社を分析対象としました。その結果、労務費は原材料費やエネルギー価格に比べて、最も価格転嫁が難しいと認識されています。特に中小企業や小規模企業では、約3社に1社が「まったく転嫁できていない」との回答をしています。
主な要因として挙げられたのは、「受注減少への恐れ」であり、企業は交渉の前段階で既に多くの課題に直面していることが浮き彫りになりました。例えば、指針の内容を理解している企業が3割にとどまる一方で、認知していない企業が約7割を占めているというデータも示されています。要するに、指針を理解することが労務費の価格転嫁に寄与する傾向があることが分かりますが、それが実行に移されていない点が問題です。
問題の根本
調査結果によると、労務費に関する議論が発注者側から始まるケースは非常に少ないことが判明しました。約半数の企業が「全くない」と回答しており、受注者側が自らこの問題を提起する必要に迫られています。このため、企業が労務費を他のコストと切り分け、根拠となる資料を用いて説明を行うことで、価格転嫁が進む可能性があります。
さらに、企業は春闘や最低賃金改定などの公表資料を活用し、労務費の根拠を示すことで、交渉がよりスムーズに進むことが期待されます。これは、受注者側が真剣に価格交渉に臨むための一歩となるでしょう。
最後に
労務費の価格転嫁は、中小企業の賃上げ原資の確保に直結する重要な問題であり、企業は自社の価値を再認識し、強みを活かした価格交渉に取り組む必要があります。また、これは単に受注者の努力だけでは解決できない問題です。発注者側の行動変容や全体的な取引環境の改善も求められます。さらに、取適法の施行により、価格交渉の環境が改善されることが期待されていますが、企業としてもこの制度を理解し、積極的に活用していかなければなりません。今後も愛知地域の企業がこの課題に対処し、持続的な成長を実現するために、こうした努力が必要です。
詳しい調査結果が気になる方は、名古屋商工会議所の公式サイトにてご確認ください。