名古屋大学とGOTOが進める安全な廃リチウムイオン電池の回収技術
廃棄されたリチウムイオン電池は、私たちの生活の中で数多くのデバイスに使用されている一方で、その取り扱いや処分には注意が必要です。スマートフォンやノートパソコン、モバイルバッテリーに広く利用されているこれらの電池は、劣化や損傷に伴い、膨張や破損が生じ、最悪の場合は発火や火災の原因となることがあります。この問題に対抗するため、名古屋大学と株式会社GOTOが共同で研究を行い、安全な回収とリサイクルを実現する技術の開発に取り組んでいます。
研究の背景と必要性
近年、廃棄されたリチウムイオン電池が引き起こす火災事故が全国各地で報告されるようになり、特に廃棄物の収集過程においてその危険性が顕著化しています。これにより、廃電池を安全に保管または収集するための新たな枠組みが求められています。しかし、既存の防火設備は設置スペースやコスト、安全管理の観点から導入が難しい現場が多く、リサイクルの現状を改善するためには、より誰にでも取り入れられる技術が必要です。
共同研究の目指す技術
本研究では、火や熱に応じて反応し、自動的に火災を抑えることができる「消火性成形体」の開発に焦点を当てています。この素材は、リチウムイオン電池の保管ボックスや運搬コンテナなどに組み込むことができる柔軟性を持ち、電源や水道が必要ないため、設置が難しい場所でも利用が可能です。この新技術によって、環境への影響を最小限に抑えつつ、低コストで安全に電池の回収ができる未来が期待されています。
各機関の役割
本研究は、名古屋大学の石垣範和助教、株式会社GOTO、プロ・クリエイティブ株式会社の三者がそれぞれの強みを生かし進めています。名古屋大学はリチウム二次電池材料の研究開発を担当し、材料工学に基づく知見を活用します。GOTOは粉末成形技術を駆使し、消火性成形体を製造するためのプレス装置を開発。プロ・クリエイティブは、製造した消火性成形体を用いた消火機器を製造します。
今後の展望
株式会社GOTOは、このプロジェクトを通じ、リチウムイオン電池のリサイクル技術の安全性向上を目指します。さらに、電池リサイクル分野に限らず、環境保全技術や次世代エネルギー材料など、さまざまな新しい領域への展開も視野に入れており、粉末成形技術の進化を続けることを目指しています。
この研究が実用化されれば、廃リチウムイオン電池の安全回収が実現し、循環型社会の実現に向けた大きな一歩となることでしょう。今後の進捗に期待が寄せられています。