OJTの重要性と人事が直面する課題
近年、多くの企業が新入社員や若手社員の育成において悩みを抱えています。会社を支える若手社員は、即戦力としての期待や、将来的なリーダーシップの育成など、さまざまな観点から重要視されています。しかし、彼らの育成の過程で直面する「OJT(On-the-Job Training)」への取り組みには、大きな課題が潜んでいます。ALL DIFFERENT社が実施した調査によると、企業の人事担当者302人を対象に、彼らが感じるOJTの課題について分析されました。
調査背景
厚生労働省のデータによると、新卒で就職した社員の約3割が、3年以内に離職してしまうという調査結果があります。この事実は、企業における人材育成の重要性をより一層浮き彫りにしています。人手不足が進む中、時間と労力をかけて育てた人材が早期に離職してしまうのは、企業にとって大きな損失です。そうした背景の中で、企業は新入社員や若手社員が抱える課題を理解し、彼らを育てる手法としてOJTに注目しています。
調査結果の概要
調査結果は、以下のような内容で明らかになりました。まず、人事担当者が若手社員に対して直面する最大の問題として挙げられたのが「主体性・積極性」です。この能力の不足は、若手社員自身の成長にとどまらず、企業全体の成長に影響を与える大きな要因とされています。
次に、OJTに特有の課題として最も多く指摘されたのは「OJT担当者によってOJTの進め方や精度にばらつきが存在する」ということです。これは、教育の場における担い手の知識や経験の違いが、教育の質を左右することを示しています。
さらに、OJTの改善策を検討している企業の約3割が、具体的な内容をまだ検討していないと回答していることも驚きでした。各企業の規模によっては、OJT担当者のトレーニングの必要性や、育成対象者の目標を明確にすることが重要なポイントとして浮かび上がっています。
OJTを実施する企業の実態
調査の結果、90%以上の企業がOJTを実施しているものの、人事担当者の多くが「OJTの内容にばらつきがある」と感じています。これに加え、従業員の規模により感じる課題は異なります。従業員が100人以下の企業の場合、OJT担当者が十分でなかったり、適切な指導を行えなかったりするケースが多く見られます。一方で、1001人以上の企業ではOJTを担当する人が必要な心構えや姿勢を持っていないことが最上位の課題として挙げられました。
若手社員は、まず業務に慣れることからスタートし、その後段階を踏んで「積極性」を養うための指導を行うことが必要です。OJTは、単なる業務の進め方を教えるものではなく、主体性や積極性を養成するためのプラットフォームでなければなりません。
課題解決に向けた取り組み
調査結果から、OJTの課題に対して具体的なアプローチを築いていくことが不可欠です。主体性や積極性を求める人材を育成するためには、まず人事担当者自身がこの課題を理解し、取り組む必要があります。今後積極的に、次のようなステップを踏んでいくことが考えられます。
1.
目標の明確化:OJTを通じて育成したい具体的な目標を明確に設定し、若手社員に具体的な行動を促すことが重要です。
2.
段階的アプローチ:若手社員がOJTを通じて成長できるよう、段階を追った指導法を考え、計画的に進めていくことが必要です。
3.
フィードバックの頻度を高める:OJT担当者が主体的に若手社員の行動を観察し、具体的なフィードバックを行うことで、若手社員は自らの成長を実感できるようになります。
OJTは、単に社員を育てるための方法ではなく、企業文化や組織体系を反映した重要なプロセスであることを認識することが肝要です。企業と若手社員が共に成長できるよう、OJTを通じて主体性や積極性を育成していくことが、企業の未来を創り上げていく鍵となるでしょう。
まとめ
新入社員や若手社員を育成する上でOJTが果たす役割は非常に重要ですが、実施にあたっては多くの課題が存在することが明らかになりました。主体性や積極性を持つ人材を育成するためには、企業全体のリーダーシップや教育体制を整え、具体的な改善策を計画し実行することが求められます。今こそ、企業はこの課題に真正面から取り組む必要があるといえるでしょう。